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クジラはなぜ保護されなければならないのか

クジラはなぜ保護されなければならないのか

10月になると、必ずニュースになるトピックがあります。毎年10月下旬には、IWC (International Whaling Commission、国際捕鯨委員会) の総会があり、捕鯨についての是非や日本政府の対応といった話題がテレビやネットを賑わせます。「捕鯨 vs. 反捕鯨」という構図については知っている方も多いでしょうが、それでは「クジラはなぜ保護されなければならないのか」については正しく理解していますでしょうか。

捕鯨の歴史と役割

捕鯨の歴史と役割
画像:古座浦捕鯨図・樫野崎網代

クジラは英語で「whale」と言いますが、これが動詞の進行形「whaling」になると、捕鯨という意味になります。捕鯨というと「日本 vs. 世界」と思っている方も多いようですが、捕鯨は日本だけの文化ではありません。世界中で捕鯨は行われていました(そして一部地域では今も行われています)。

捕鯨の歴史は人間の歴史と同じくらいの長さがあるとされています。古代の地層の特定の箇所から、クジラの骨がたくさん見つかっており、人間が銅や鉄などの武器を使ってクジラを捕っていたことが判明しています。

では、歴史をさかのぼる前に、捕鯨はどのような目的で行われていたのでしょうかを確認してみましょう。クジラの重要な役割は2つあります。

1.油として
歴史的に、また世界史的に見て、最も大きな目的は「クジラ油」を取るための捕鯨です。クジラ油は主に2種類あります。人間が消化できない成分が含まれているため、工業用に使われた「マッコウクジラの油」と、食用に使われた「ナガスクジラの油」です。そして歴史的に重要なのは、「マッコウクジラの油」になります。

マッコウクジラの油、略して「マッコウ油」ですが、これは「燃料用」「潤滑油用」「害虫駆除用」「爆薬製造用」など、多くの利用方法がありますが、最も重要だったのは「潤滑油」です。産業革命が起こり、欧米から急速な工業化が進んでいきましたが、機械を絶え間なく動かし続けるための最良の油として、マッコウ油が用いられました。なお、「黒船来航」のアメリカのペリー提督が日本に来た目的は「黒船を動かす燃料としてのマッコウ油」が目的ではなく、「潤滑油用として使うマッコウ油を取るための、捕鯨の中継地として日本を利用したい」というものでした(ペリーの黒船の燃料は、マッコウ油ではなく石炭です)。

2.食料として
日本では、60代以上の人であれば、戦後間もないころに「鯨ベーコン」を食べた記憶がある方が多いようです。戦後、畜産業が復興する前は、人々のたんぱく源としてクジラは広く食されており、学校給食にも出ていました。しかし、戦後の復興とともに畜産業が盛んになるにつれ、「計画的に安価に生産できる畜産物」と比べ、「クジラの個体数が減り高額になり、かつ安定供給できないクジラ」は次第にたんぱく源としての主役の座を退いていきました。

その後、クジラの資源保護のために捕鯨が規制されたことも原因となり、クジラは「毎日食卓に上るたんぱく源・食べ物」としてではなく、「ごくまれに食べる珍味」のような位置づけになりました。ちなみに、私が育った土地では、「クジラ汁」という、醤油味のだし汁にクジラ肉などの具材を入れて作って、豚汁のように食べる文化がありました。なお、クジラを食べていたのは日本人だけでなく、ヨーロッパ、アメリカでも食されていました。現在では、捕鯨国であるノルウェー、アイスランドなどごく一部で引き続き食されています。

クジラは減っているのか?日本政府の見解

クジラは減っているのか?日本政府の見解
クジラは減っているのか?日本政府の見解

クジラを保護する理由として、最も重要なのは「海洋資源の保護」です。クジラは乱獲により個体数が減少しており、クジラ漁を控えないと絶滅する危険がある、ということです。日本政府は、一部の絶滅危惧種を除き、クジラの個体数は回復しており、絶滅の恐れのない一部のクジラ(ミンククジラなど)を調査用として捕鯨することは、資源保護の観点から問題ないとしています。また、日本では長らくクジラ食と捕鯨の文化があるため、文化保護の意味でも捕鯨は必要という立場をとっています。

捕鯨に反対する国・団体の見解

捕鯨に反対する国・団体の見解
捕鯨に反対する国・団体の見解

日本、ノルウェー、アイスランド以外のほとんどの国は捕鯨反対、もしくは捕鯨について関心を持っていない国です。「資源が回復しているのになぜ捕鯨に反対するのか」という捕鯨国に対する反対としては、「捕鯨を行う際、ミンククジラなどの資源が回復しているクジラだけでなく、他のクジラも捕鯨してしまう可能性があるからだ」という点と、「捕鯨国が調査しているデータに信用性がない(引き続きクジラは保護される必要がある)」という2点となります。

今後クジラはどうなるのか?

今後クジラはどうなるのか?
今後クジラはどうなるのか?

捕鯨を推進する国においても、豚や牛といった畜産物が広く流通する現在、人間が健康に生きていくためのたんぱく源の確保という観点で、クジラが必要とされているわけではありません。クジラ食の文化、捕鯨文化を守るという意味合いのほうが強いのが現状です。特に大きな変化がない限りは、捕鯨国はクジラの個体数は回復していると主張し、そして捕鯨に反対する国は「絶滅危惧種のクジラを捕鯨する恐れがある」「データが信用できない」という主張を繰り返す現状が続くものと考えられます。

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