
動物愛護、絶滅危惧種の保護という観点から、「動物による農作物の害を防ぐ」「生活やたんぱく質のための伝統」として以外の狩猟、例えば「趣味やゲームとしての狩猟」に対して、厳しい目が向けられるようになってきています。特に絶滅危惧種でもない、イギリス伝統の貴族スポーツである「キツネ狩り」も、動物に対して残酷だということで現在禁止されています。
もしこれが、希少な生物の狩猟の場合、どのような議論を引き起こすのか、ということの一例を見てみましょう。
トランプ大統領の息子(ドナルド・トランプ Jr.)

2017年4月時点で39歳のトランプJr.さんは、現在アメリカ大統領であるドナルド・トランプ氏の長男です。母は、トランプ大統領の最初の妻であるイヴァナ・トランプさんです(トランプ大統領は2度の離婚歴があり、現在の大統領夫人はメラニア・トランプさんとなります)。
現在は、「トランプ・オーガニゼーション (The Trump Organization)」という、トランプ一族が経営する500の企業群を束ねる企業で、大統領となった父に代わり会社を経営しています。ビジネスは多岐に渡り、有名な不動産業、ホテル業、カジノ業だけでなく、建設業、店舗物販、ネットショッピング、そして投資業全般を手掛けています。
多感な少年期に、父親の離婚劇がメディアで大々的に報じられる、という自体に直面しましたが、有名なボーディングスクール(富裕層向けの寄宿舎制学校)に進学した後に、名門であるペンシルヴァニア大学にて、経済学の学位を取得しています。ちなみに、この大学はMBAで有名なウォートンスクールを擁しているのですが、トランプJr.さんはMBAは取得していません。家業を継ぐことがほぼ決まっているうえで、MBAの取得は重要ではないと判断したのかもしれません。
モデルのヴァネッサ・ハイドンさんと結婚して、現在は2人の娘と3人の息子の父となっています。
ゲーム狩猟で炎上

トランプJr.さんは幼いころ、父であるトランプ大統領、そして母方の祖父から、狩猟や釣りなどを学びました。多忙でかつ、マスメディアから追いかけられる父との、心安らぐひと時だったのかもしれません。その後、狩猟にどっぷり「ハマッて」しまったトランプJr.さんは、2010年にアフリカに狩猟旅行に出かけます。そして、仕留めたヒョウの画像、仕留めた後切り落としたゾウのしっぽの画像をSNSで共有した結果、2年後の2012年に大きな非難を招くことになりました。
"She was asking for it. A strong cheetah would never allow itself to be subjected to getting shot." –@EricTrump pic.twitter.com/0df30bELnW
— Full Frontal (@FullFrontalSamB) August 2, 2016
The GOP. Here's Donald Trump Jr. holding the tail of an elephant (party symbol) that he killed. #TrumpSacrifices pic.twitter.com/FIGkcH2F0t
— xoxo, Jane (@PoodleMama1966) July 31, 2016
ヒョウならびアフリカゾウは絶滅危惧種として保護されるべき動物として扱われているのも関わらず、それを単なるゲームとして狩猟して、写真をアップして自慢したことは、多くの人の感情を逆なでするのに十分でした。それがたとえ、現地では合法の狩猟であったとしてもです。アメリカは、富の偏在が著しく、中間層が縮小して「非常に豊かな一部の人たち」と「貧しい大多数」に分かれつつあります。トランプJr.さんの写真は、単に絶滅危惧種の動物をゲームで殺した、というだけでなく「お金持ちが道楽で絶滅危惧種の動物を殺すためだけで、アフリカまで行っている」と、富裕層向けの反感とも相まったのです。結果、トランプJr.さんは、当時父がホストをやっていたTV番組のレギュラーを下ろされることになりました。
それだけでは終わりません。このヒョウとゾウの狩猟の話は、2016年のアメリカ大統領選でも取り上げられました。Twitterで再びこの話題に火が付き、民主党候補のヒラリー・クリントンさんが、共和党候補のドナルド・トランプさんを攻撃する1つの材料として使われたのです。
狩猟はかくあるべきか?

それでは「正しい狩猟とは何か」と考えると、これには多くの意見があります。例えば「法律さえ守ればよい」ということであれば、トランプJr.さんの狩猟は全く非難に値しないことになりますが、「絶滅危惧種を狩猟すべきでない」であれば、非難されても仕方ないことになります。また、「そもそもゲームとしての狩猟自体が残酷なので、生活のため・獣害を防ぐため以外は一切禁止すべきだ」という意見もあります。
そして、狩猟に対してどんどん制約が加わっていくだけではなく、逆の動きもあります。イギリスでは、2015年に当時のキャメロン首相が、現在禁止されているキツネ狩りを復活させたいと意欲を示したこともあります。とはいえ今後は、限定的な狩猟は認めつつ、全体としては大幅な制限がかかる方向で法制度が改変されていく国が多いと推察されます。
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