
2011年の東日本大震災、そして直後に発生した福島第一原子力発電所事故により、日本の原発事情は一変しました。これまでは、「水力、火力、原子力をバランスよく発電する」という「ベストミックス」という国策に従って、日本各地に原発が設置されていきました。しかしながら、今後は原発の役割が限定的になると見られています。2011年から6年経過した、2017年の原発事情を考えてみたいと思います。
2017年の日本の原発の現状

2011年の福島第一原発事故の後、政府からの要請により、各電力会社は原発の稼働を全て停止させました。その後、徐々に運転再開が始まっており、2017年4月現在で運転を行っている原発は、四国電力伊方原子力発電所3号機、九州電力川内原子力発電所1号機、2号機の、合計3基となります。逆に言うと、40基以上の原発は現在でも運転が再開されていないという状況です。
日本は、わずかの石炭を除くと、石油や天然ガスといった天然資源を算出しない国です。よって、火力発電所の燃料となる石炭、石油、天然ガスは輸入に頼っているのが現状です。2011年に全国の原発が一斉に停止されましたが、原発が停止されても人々が使う電力が減少するわけではありません。そうなると電力会社は、火力発電所の稼働率を高めることで、停止している原発の発電量を補おうとしました。しかし、それは資源国から不利な条件(高額)で天然資源を輸入しなければならない、ということになります。
天然資源の輸入価格が上がると、燃料調整費という項目で、電力利用者に負担増を転嫁することはできますが、まるまる全額を転嫁することはできないため、電力会社の採算が悪化してしまいます。よって、各電力会社は早急に原発を再開したい、という移行を持っています。しかしながら、「日本の原発は安全」と言われていた「安全神話」が崩れた今、原発がある地方自治体では、原発の再稼働に反対する声が多く上がっています。
地震列島と原発

原子力発電は、「少量の燃料で、大きな電力を発電できる」ことから、かつては「夢のエネルギー」「未来のエネルギー」と呼ばれていました。電力会社は、原発を持つことがステータスであるかのように、原発の新設、増設に注力していきました。そして、1970年代のオイルショックは、産油国の政治的な移行により、石油価格が急上昇すること、電力会社からすると石油火力発電所のコストが急上昇することが明らかになったため、原発への注力は一層強いものになりました。この方針は当時は合理的、論理的なものでした。
しかし、2011年の福島第一原発事故により、「地震列島である日本に原発を立てて稼働させてもよいのか」という意見が強くなりました。世界の全地震のうち、日本周辺で起こるものは10%とも言われており、3.11後も再び地震に見舞われる可能性が大きいからです(実際、2016年4月には大規模な熊本自身が発生しています)。原発をいくら正しく運用したとしても、それを上回る地震が発生したら、第二の福島第一原発事故が起こってしまうのです。
政府は2012年から、再生可能エネルギーの固定価格買取制度を始めて、火力でも原子力でもない再生可能エネルギーによる発電増加を目指しています。これは原発への比重を低くするという観点からは望ましいものだ、という意見がある反面、「再生可能エネルギー発電賦課金」という料金が電力使用量に応じて追加で徴収されることに対する反対もあります。「ただでさえ諸外国と比べて高額な電気料金が、さらに高くなるのか」という批判です。しかし、脱原発による安全性向上と、再生エネルギー発電賦課金による毎月の負担増を比べると、安全性が上がったほうがよいと考える人が多いようで、電力料金に対する大きな反対は起こっていません。
日本の原発のこれから

現在、日本で多い論調としては「日本で原発を新設するのは無理だろう」という意見です。現在、多くの国民は「再生可能エネルギー発電賦課金」による負担増を受け入れています。電気代が高くなっても、原発が少ない方がよいという意向の表れではないかと思われます。その一方、原発の運転再開は今後も続いていくと思われます。
今後最もあり得そうなシナリオは下記の通りです。
日本は人口が減少することにより、原発の増設がなくてもやっていけるのではないかと考えられます。しかしながら、人口が減少することは、国力が減少することを意味するので痛し痒しという状況だと言えます。
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