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ホンダ(本田技研)の伝説に残るマスキー法対策を振り返る

ホンダ(本田技研)の伝説に残るマスキー法対策を振り返る

1972年に、本田技研工業(ホンダ)が、アメリカの排気ガス規制(通称マスキー法)に対応したエンジンを開発し、一躍アメリカで大きな支持を得るきっかけになったエピソードは、NHKのテレビ番組「プロジェクトX」などや、それの書籍化などで幅広く知られています。「プロジェクトX」では、このエピソードを「本田宗一郎社長と若手技術者の衝突、ならび世代交代」というテーマで描いています。

では、このマスキー法対策のエピソードを別な観点から振り返りつつ、現代を見直してみようというのが本記事となります。プロジェクトXを既にご覧になっている方も、そうでない方もぜひご覧ください。

エドマンド・マスキー氏について

エドマンド・マスキー氏
画像:POLITICO MAGAZINE

まず、このマスキー法の名前の由来ですが、アメリカ最東部から選出された上院議員の「エドマンド・マスキー」の名前からとられています。このマスキー氏は、1968年の大統領選挙(アメリカ共和党のリチャード・ニクソンが当選した大統領選挙)で、民主党の大統領候補であるヒューバート・ハンフリー候補とともに民主党の副大統領候補として出馬した大物政治家です。現代でいうと、2000年の大統領選挙で、得票数は上回ったものの、獲得選挙人数でジョージ・W・ブッシュ氏に敗れたアルバート・ゴア氏と似ています。ともに、大統領選を戦い、大物政治家で、かつ環境対策に熱心だからです。

マスキー氏が自動車の排気ガス対策に熱心だった理由は、一般的に「企業寄りに共和党」「消費者寄りの民主党」という構図だけでなく、マスキー氏の地盤がメイン州であることが大きく影響しています。自動車産業の集積地であるデトロイトなどの都市を抱えるミシガン州などと異なり、メイン州では自動車産業が発達していなかったことが大きいです。つまり、排気ガス対策を強く勧める法案を推し進めたところで、メイン州の企業からの献金が減るリスクがないのです。そして有権者には支持されるので、「得るものは多くあり、逆に失うものが少ない」という状況だったのです。

そして、一部勘違いされていることもありますが、マスキー氏のこの法案は「日本車を締め出すために作られた法案」ではありません。当時アメリカにおける日本車のシェアも、車の品質もまだまだ低かった時代なので、この対策は専らアメリカ製の自動車がターゲットとなっています(いわゆる「ジャパン・バッシング」と呼ばれるアメリカに輸入される日本製品叩きが行われたのは、1980年代になります)。

ホンダの当時の位置づけと成功

CVCC シビック
画像:HONDA 語り継ぎたいこと

現在では、400万台以上の自動車を世界中で販売しているホンダですが、当時は日本の中でも弱小自動車メーカーという位置づけでした。そもそもホンダは、二輪車メーカーとして発展した会社で、四輪車の開発では後発だったためです(ホンダの四輪車参入は1963年となります)。

ホンダの海外展開は、1959年にアメリカ、1961年にドイツ、1965年にイギリスと、海外の主要先進国に徐々に販売網を広げていましたが、アメリカのビッグ3には遠く及ばず、そして国内でもトヨタ自動車などの大手とは大きく水をあけられる状態でした。そんな時にやってきた「マスキー法」のニュースは、ある意味ピンチでもありチャンスでもあったわけです。世界的には零細自動車メーカーで合ったホンダが、このマスキー法にいち早く対応エンジンを開発することができたら、世界で名前を売る大きなチャンスとなります。マスキー法対策のために、F1への参戦を休止させてまで新エンジン開発に注力したのは、「社運を賭けたプロジェクト」だったためです。

ホンダはこの新エンジン開発の賭けに成功し、1972年に、世界で初めてマスキー法をクリアしたCVCCエンジンを搭載したシビックを発売したことは広く知られています。後にCVCC以外のエンジン技術が開発されたため、CVCCエンジンは、排気ガス対策エンジンとしての主流にはなりませんでしたが、ホンダの躍進に大きく貢献しました。

環境対策技術は「ブランド構築 x 儲かる」

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販売台数はHONDAの1/50だが時価総額は同じ5.8兆円のテスラ

今年(2017年)は、CVCCエンジン開発から45年目となりますが、状況は一変しています。ガソリンと電気の両方で走るハイブリッド車が広く受け入れられ、そして日産のリーフ、またアメリカのテスラといった完全電気自動車もビジネスを伸ばしています。

特に注目すべきはテスラです。販売する全ての自動車が電気自動車というテスラは、販売台数が10万台にも満たない(ホンダの1/50以下)にも関わらず、株式時価総額ではホンダが5.8兆円、そしてテスラも同じく5.8兆円と肩を並べています。もちろん、テスラは全てのラインナップが利益率が高い高級車ですが、それにしても1/50の売り上げの企業なのに時価総額が同じになってしまうのです。

ここには、ホンダが過去に通過してきたのと同じものを見ることができます。つまり、「環境技術で差別化すると、会社は実体以上に評価され、ブランドになる」ということです。ホンダが1970年代に恩恵を受けたブランド構築と近い形で、テスラも2010年代にその恩恵を受けているのです。発展途上国での四輪車市場が急拡大するなか、自動車メーカーにとっての環境対策技術はさらに重要性を増しています。テスラとは別な形で、環境対策技術で名を上げる自動車はどのような形で登場してくるでしょうか。楽しみです。

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