
企業にお勤めの方から名刺をもらうと、住所、電話番号、メールアドレスなどと共に記載されているのがFAX番号です。FAXは会社によって使う、使わない、の差が激しく、「毎日何通も受診しているし、何通も送っているよ」という会社がある一方、「一応FAX番号はあるが、使ったことがない」という人までいるほどです。
以下では、エコナウの観点からFAXの功罪について考えてみたいと思います。
FAXの利便性

FAXが圧倒的な価値をもたらしたのは、インターネットが普及する以前に「紙を画像データとして、電話回線で瞬時に送ることができた」ためです。かく言う私も、親が「FAX付電話というとても便利な機械を導入しようと思う」といって、10万円ほどするFAX付電話をNTTから購入したことをよく覚えています。もう何十年も前の話です。
インターネット出現以前は、企業同士の注文の受発注、また個人が通信販売で注文を行う際などに威力を発揮しました。電話であれば、即座に連絡ができるものの伝達ミスが発生しかねません。また、郵送となると確実に内容を伝えられますが時間がかかります。また、相手のオフィスまで出向いて書類を渡すのは、近い場所にある相手先に限られます。となると、瞬時に画像データを送ることができるFAXはまさに革命的な存在でした。
また、FAXはいつ、どこにFAXを送ったという送信履歴が保存されていますので、「FAXを受け取っていない」と言い逃れをすることもできません。大きなお金が動く企業間の取引においては、「言った言わない」を避けるために特に重宝されました。
他にFAXの優れている点は、パソコンやスマホを利用しなくてもすぐに利用できることです。紙を差し込み、FAX番号を入れて、送信ボタンを押すだけです。特段の設定も必要ありません。よって、パソコンやスマホの扱いが苦手な人にとっては、改めて煩雑な内容を学習する必要もなく使えるコミュニケーション方法です。
このような話をすると、「FAXなんて遅れている。FAXを使っているのは日本だけだ」などと言う人がいますが、実は違います。海外でもまだFAXが利用されていることがあります。例えば、こちらの名刺はアメリカ人ビジネスマンの名刺ですが、FAX番号が記載されています。

FAXはなぜ責められるのか

次に、FAXの功罪の「罪」のほうについて触れてみたいと思います。
1.紙でしか受け取れない
一番大きなデメリットは、FAXは紙で送って紙で受け取るという点です。紙で受け取る、ということは、FAXが来たらFAXがある場所まで行かないと内容を確認することができません。例えば、一日直行直帰の出張がある朝に会社にFAXが来たとしても、その内容を確認することができません。そうすると、FAXの確認が翌日になり処理が無駄に一日遅れる、なんてことが生じます。これがEメールであれば、パソコンやスマホでどこでも受信・確認できるため、確認が一日遅れるなんてことはありません。紙であるがゆえに、物理的な制約が生じ、結果生産性が低下します。
2.送信にお金がかかる
インターネット接続料はかかるものの、メールは送るたびに料金が取られるなどということはありません(ガラケーのメールが例外です)。しかし、FAXは電話回線を通じて送るというサービスの特性上、1通いくらという料金が発生します。これが1, 2件であればよいですが、毎月数百通、数千通という処理を行っている場合、FAX送信費用も馬鹿になりません。
3.受信時に紙を消費する
当然ですが、FAXを受信すると紙が消費されます。一度目を通してすぐに捨ててしまうような内容であっても、紙が消費されてしまいます。これがEメールであれば、全てが電子データとしてやり取りされますので、紙が無駄になることはありません。
特にFAXDMという営業手法では、不特定多数に何百通、何千通、時には何万通というFAXを送信します。これは、不要である確率が高い内容であるにも関わらず、先方のFAX紙を消費させるという紙の無駄遣いとなる営業方法です。
4.高解像度・色情報を届けられない
FAXの解像度は低いため、微細な画像などを表現することはできません。そして白黒なので、色情報を届けることができません。よって、送ることができる内容は文章が中心ですが、それであればメールで送ればいいのでは?という方が大多数になってきています。
以上のように、インターネット出現後は「なぜあえて不便なFAXを送信料を払って使わなければならないのか」と言う声が若い人を中心に増えています。
FAXは現在の中高年と共に次第に衰退する

FAXを好む人はまだ多いものの、新興企業やベンチャー企業ではそもそもFAX自体を設置していないという会社も増えてきました。生産性を下げること、そしてエコではないことがその理由です。FAXを好むのは、FAX文化に親しんだ中高年が多い大手企業や中堅企業ですが、こうした企業ですらFAXへの依存は低下しています。今後はFAXの利用が徐々に減っていくことは間違いありませんが、FAXが完全になくなるのは現在の中高年がリタイアする10年後、20年後くらいになるのではないかと思われます。
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