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アジアでオゾンホールが拡大?

アジアでオゾンホールが拡大?

オゾン層の破壊が確認され、その原因が特定されたのち、国際的な枠組みの立ち上げまで極めて迅速でした。1987年に、オゾン層を破壊するフロンガスなどを国際的に規制する「モントリオール議定書」が署名され、1989年から施行されました。

オゾン層が薄くなった部分から有害な紫外線が入ってくる、いわゆるオゾンホールは減少したと報告されていましたが、全く逆の調査が上がってきました。見ていきましょう。

規制外物質の大量排出による脅威

規制外物質の大量排出による脅威
規制外物質の大量排出による脅威

2017年に「アメリカ地球物理学連合」という、地球物理学の学会が発表したレポートによると、モントリオール議定書で規制されていない一部の「クロロカーボン」の大量排出が主な問題だと指摘しています。

クロロカーボンとは、極めて安定しているという特性から産業用の溶剤として利用されています。このクロロカーボンにはいくつかの種類がありますが、「モントリオール議定書で規制されていない」クロロカーボンであってもオゾン層に甚大な影響を与えていることが判明したのです。

具体的には、2003年以後、クロロカーボンの一種である「ジクロロメタン」「1,2-ジクロロメタン」の大気中濃度が上昇していることが確認されました。マレーシアと台湾の上空の大気を採取して調査を行ったところ、以前に行われた調査と比べて濃度が20倍以上に達していたのです。

マレーシアと台湾の上空で極端な数値が出たから、マレーシアと台湾のみが問題か、というとそうではありませんでした。民間飛行機による空気サンプルの採取結果を分析した結果、マレーシアの首都であるクアラルンプールから、パキスタンの首都カラチまでの濃度が予想の3倍だったことが確認されました。問題は極めて広範囲にわたっていたのです。

なお、最大の排出者は中国であると推測されています。中国の経済発展とそれによるクロロカーボンの排出量の増加が、大気中のクロロカーボンの量と相関関係があると見られています。具体的には、上記の2つのクロロカーボンの50%から60%を中国が排出していると推定されています。

「抜け道」による環境破壊

「抜け道」による環境破壊
「抜け道」による環境破壊

なお、モントリオール議定書では、特にオゾン層に深刻な影響があるクロロカーボンについては、先進国では1996年までに、また発展途上国では2015年までに全廃することが定められています。これは、「発展途上国によるモントリオール議定書違反」ではなく、「モントリオール議定書に抜けがあった」ことが問題となっています。

先進国であれば、主に化学企業がそれぞれの物質ごとに「オゾン破壊係数」を測定し、オゾン破壊係数が高いものを別な物質に置き換えるといった努力を業界として行ってきました。この中には新物質の開発、普及、低価格化への努力などが含まれます。

しかし、こうした新物質を開発する力のない発展途上国の産業界は、「規制されてなければよい」という考えで、オゾン層への影響が高いが規制されていないクロロカーボンを今も使い続けているのです。環境のことを考えなければ、こうしたクロロカーボンの方が価格競争力がある(コストが安い)からです。

モントリオール議定書の強化が必要

モントリオール議定書の強化が必要
モントリオール議定書の強化が必要

企業において、利益を出して従業員に給料を出し、会社を存続させることは極めて重要です。このため、「環境に対する一段踏み込んだ配慮」よりも、「より安いコストで多くの利益を出す」ことに注力するのは、ある意味仕方ないことだと言えます。「違法行為でないのだから、何が悪いのか」と思うのは当然です。

こうした問題が明らかになった現在、実効性のある取り組みが求められています。具体的には、これまで規制対象外だった一部のクロロカーボンを規制の対象に含めて、再度条約の締結を行うことです。

中国は一人当たりGDPではまだ発展途上国(名目GDP 8481ドル)ですが、国ごとのGDP比較では世界第二位です(ちなみに世界第三位である日本の2倍以上あります)。モントリオール議定書が署名された1987年とは状況が全く異なります。「中国は発展途上国だから、議定書に含まれていないから排出し放題でいい」という態度では、地球全体が危機にさらされます。

モントリオール議定書の署名から、2017年でちょうど30周年となります。「歴史上例をみないほどの成功」と称されたモントリオール議定書によるオゾン層破壊の防止という、良い伝統を引き継いでいくためには、2017年に見合った「新しいモントリオール議定書」が必要なのではないでしょうか。その際には、規制対象範囲を広げ、発展途上国の多くにも履行義務を課す形での進化、いや深化が求められてくるでしょう。

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